Ⅳ. 観光まちづくり・商品開発

我が国は「観光立国」を宣言し、国内外からの観光客の消費を拡大し、経済を支える基盤とすることを目指しています。北陸新幹線開業を「100年に一度の好機」と捉える地元福井県を始め全国の各自治体も同様です。その手段として「日本版DMO」制度が整備され、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりを進める動きも活発化しています。中小企業診断士が地域の観光戦略、DMOの戦略を支援することが「地方創生」への直接的な貢献に繋がると言えます。

福井県中小企業診断士協会は「地方創生シンクタンク」を掲げ、この10年余り「観光の産業化」をテーマに据え、観光戦略や観光の産業化に向けた具体策を自治体に提案するなどの活動を行ってきました。当社はそのフロントランナーとして、自治体、DMO、道の駅等の観光施設、観光関連個別企業の支援を行っています。

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1.観光地力の分析⇒観光地ビジョンの明確化

 当社が開発した「ICCO(イコー)分析」は、観光地としての実力=“観光地力”を4つの要素に分解して分析するフレームワークです。

 1つ目の要素は、観光客に「行ってみたい」と思わせる、興味を持たせる力「Interest(インタレスト)」です。

 2つ目の要素が、その「Interest」の基になる、その観光地の核心(コア)となる魅力「Content(コンテンツ)」、正確には「Core Content(コア・コンテンツ)」です。

 3つ目の要素は、そのコア・コンテンツの周りに広がる、その他のコンテンツ群。それは、コア・コンテンツを生み出したその地の「自然」であったり、そのコア・コンテンツがあるが故にその周りに紡がれてきた「歴史」であったり、そこに住み集う人たちの「暮らし・風俗」であったりします。それを「Culture(カルチャー)」と名付けています。

 そして4つ目が、訪れる人たちに対する「Omotenashi(おもてなし)」です。これは、飲食やお土産の販売、宿泊の他、体験やガイド、レンタルなどその他サービスの充実度とともに、それらサービスを提供する事業者の接客、さらにボランティアや市民も含めた「おもてなし」についての能力です。

これら4つの要素の頭文字をとって「ICCO(イコー)分析」と名付けています。この内、初めの2つ「Interest(インタレスト)」「Content(コンテンツ)」は主に新規客を誘引する力、そして後の2つ「Culture(カルチャー)」「Omotenashi(おもてなし)」はリピート客を誘引するのに効果を発揮する力のことです。

この「ICCO(イコー)分析」を活用して観光戦略を立案していく流れが以下の通りです。

1)ベンチマーク選定・ICCO分析に基づく比較

   岐阜県高山市と福井県大野市との比較例

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ベンチマーク比較:高山と大野

 越前大野飛騨高山
知名度
(Interest)
市内観光地の認知度10%以下
全国的知名度不足
飛騨高山として全国的知名度
インバウンドにも有名
大観光地からの波及効果
(Interest)
広域観光ルートに含まれていない中京圏の一大観光地 “昇龍道”の中心
文化的要素・立ち寄り先
(Culture)
まちなかに歴史資産集積
密度は低く周遊に時間かかる
まちなかに歴史資産集積
近郊に世界遺産、温泉など
物販飲食店等の集積
(Omotenashi)
民営の土産物店数少ない
飲食店も散在
さんまち中心に雑貨・飲食集積
考えられる店はそろっている
宿泊施設
(Omotenashi)
旅館少なく民宿中心大型ホテル・旅館・民宿多数
観光客入込数約200万人
(宿泊客11万人)
約460万人
(宿泊客220万人)
観光消費額
(日帰り一人当り)
3,395円9,305円

2)ICCO分析からの戦略提案

大野市 観光産業化の課題

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「重要度」による優先度判定→戦略へ

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大野市 観光の産業化戦略案

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3)戦略実行のための具体策立案

2.観光商品開発・お土産開発

 観光戦略の方向性に沿って、具体的アクションの実行支援として、特にお土産品等の観光商品開発の支援を中心に行っています。
以下は大野市の「おもてなし戦略」の一環として進められた福井県内最大規模の道の駅開設に向けたお土産商品開発支援の流れの実例です。

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3.組織づくり

 観光戦略実践の核となるDMO等の組織づくり支援も行っており、例えば地元勝山市においては、組織設計からビジョンづくりから事業計画作成、実働部隊の組織など運営開始に向けた立ち上げ支援を行いました。

勝山市のまちづくりは、福井県イチオシの観光施設「福井県立恐竜博物館」を核に「観光の産業化」に向けて進んでいます。